ビジネスマンにとってネクタイはスーツと並んで必要不可欠なアイテムですが、汚れが目立ちにくいということもあってお手入れや洗濯をするという意識が軽視されがちです。
そのため「何年も洗わずに使用している」あるいは「同じネクタイを使いまわしている」という人も、比較的多くいらっしゃいます。
ですが実際は目に見えないだけで繊維の奥には汗や皮脂、大気中のチリなど多くの汚れが溜まっていますので、日々のお手入れや定期的な洗濯が必要です。
そこで今回は自宅で簡単にできるネクタイの洗い方や、ネクタイをより長く清潔に使い続けるためのお手入れ方法について紹介したいと思います。
- ネクタイの洗い方がわからない
- 家で洗うとシワシワになりそうで怖い
- 日々のお手入れってどうやるの?
こんな悩みや疑問を持っている人にはピッタリです。ぜひ最後までご覧ください。
全体の流れとしては
記事構成
- ネクタイの洗濯可否について
- ネクタイの正しい洗い方
- ネクタイのお手入れ方法
こんな感じで進めていきます。
目次
そもそもネクタイって自宅で洗っても大丈夫なの?
洗濯可否について簡単にまとめるとこんな感じです。
自宅で洗えないネクタイ
- 天然素材のネクタイ(シルク、ウール、リネン、コットンなど)
- 柄物のネクタイ
- 刺繍の入ったネクタイ
自宅で洗えるネクタイ
- 人工素材のネクタイ(ポリエステル、レーヨン、アセテートなど)
洗濯可否についてはネクタイについている「洗濯表示」を見れば簡単に判断できますよ。
具体的には次のマークが洗濯表示にあれば、家で洗えるネクタイです。
洗濯可能表示 | 洗濯処理内容 |
液温は40°Cを限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる | |
液温は40°Cを限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる | |
液温は40°Cを限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯処理ができる | |
液温は30°Cを限度とし、洗濯機で通常の洗濯処理ができる | |
液温は30°Cを限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる | |
液温は30°Cを限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯処理ができる | |
液温は40°Cを限度とし、手洗いによる洗濯処理ができる |
反対に洗濯ができない場合は
洗濯不可表示 | 洗濯処理内容 |
家庭での洗濯禁止 |
といったマークが表示されているはずです。
こんな場合は無理に自分で洗ったりせず、プロのクリーニング師にお願いしましょう。
間違っても面倒くさいからといった理由で、自分で洗うのだけはやめてくださいね。
失敗すると
- 型崩れ
- 縮み
- シワ
- 色落ち
- 毛羽立ち
- 刺繍のほつれ
- 柄物のにじみやはげ
などのトラブルが起きて、二度と人前でつけられなくなってしまいますよ。
ネクタイは手洗い?洗濯機?どっちで洗うの?
洗濯表示に洗濯OKマークのあるネクタイなら洗濯機を使って洗うこともできますが、失敗するリスクを減らすなら「手洗い」がおすすめです。
洗濯機を使えば手間もかからず楽ですが、やはり手洗いに比べ生地への負担が大きくなります。
一度型崩れやヨレヨレになったネクタイはなかなか元には戻りませんので、よほどの理由がない限りはできるだけ手洗いを心がけるようにしましょう。
どうしても洗濯機を使って洗いたい場合は以下の点に注意しながら行ってください。
洗濯機で洗う際の注意点
- 洗濯コースは優しく洗える「手洗いコース」や「ドライコース」を選ぶ。
- 洗濯中の負担を減らすため必ず「洗濯ネット」に入れる。(ネクタイ用の洗濯ネットがあれば◎)
- 脱水時間は1分程度に抑える。(追加する場合は30秒ごとに様子を見ながら行う)
- 洗濯終了後は放置しないですぐに取り出す。
普通に洗濯するより失敗のリスクを大幅に軽減できますよ。
失敗しないネクタイの「手洗い」方法
それでは失敗しないネクタイの「手洗い」方法について紹介します。
まずは手洗いに必要なアイテムを用意します。
用意するもの
- おしゃれ着用中性洗剤(エマールやアクロンなど)
- 洗い桶や洗面器
- 40℃程度のぬるま湯
- 綿素材のあて布(ハンカチやスカーフなど)
- 大きめのタオル(6枚程)
- ハンガー
- スチームアイロン
次は手順の紹介です。
「手洗い」の手順
- 目立たない場所で「色落ちテスト」をする
- シミや大きな汚れを先に落とす
- 洗い桶や洗面器に「洗浄液」を作る
- ネクタイを5分程度浸けて「ゆらし洗い」する
- 水の濁りや泡がなくなるまで「すすぐ」
- タオルを使ってやさしく「脱水」する
- しっかり「乾燥」させる
- アイロンをかけて仕上げる
とくに難しい作業はありませんが、いくつか注意点はありますので一工程ずつ確認しながら読み進めてください。
1.目立たない場所で「色落ちテスト」をする
洗濯可能なネクタイならそれほど心配する必要はないかもしれませんが、万が一ということもあるので念のため「色落ちテスト」を行ってください。
やり方は簡単です。
ネクタイの裏など目立たない場所に洗剤の原液を軽くつけ、1分程度置いたのち白い布を押し当てて確認するだけです。
白い布に色移りしていなければ洗濯可能です。
2.シミや大きな汚れを先に落とす
色落ちテストで問題がなかったあとはネクタイ全体を見渡し、シミや汚れ具合をチェックします。
ジュースの飲みこぼしやカレーうどんの汁はねなど、目立つシミや汚れが見つかった場合は先に汚れを落としておきましょう。
ジュースや醤油など「水性」のシミ汚れの落とし方
ジュースや醤油など水性のシミ汚れは、タオルやティッシュに洗剤を少量つけポンポンと汚れ部分を軽く叩くことで汚れを落とします。
とくに難しいことはないですが、強くこすり過ぎると生地を傷める可能性があるので軽く叩くだけにしておきましょう。
カレーやパスタソースなど「油性」のシミ汚れの落とし方
カレーやパスタソースなど水に溶けにくい油性のシミ汚れは、洋服のシミ抜き用として重宝される「ベンジン」を使って汚れを落とします。
綿棒にベンジンを染み込ませ、汚れ部分をポンポンと叩いて汚れを落としていきましょう。
注意点としてベンジンは揮発性が高く引火しやすい液体なので、
- タバコや蚊取り線香など火源と成るものを近くに置かない
- 窓を開けて通気性をよくする
など取り扱いには十分注意してください。
つけ過ぎやつけたあとの長時間放置などにも注意しましょう。
3.洗い桶や洗面器に「洗浄液」を作る
目立つシミや汚れを落としたあとは、ネクタイ全体を洗うための「洗浄液」を作ります。
洗い桶や洗面器にネクタイがしっかり浸るくらいのぬるま湯(40℃程度)を貯め、おしゃれ着用中性洗剤を分量通りに入れます。
ただあまり温度が高いと生地を傷める可能性もあるので、40℃くらいをキープできるよううまく調整してくださいね。
4.ネクタイを5分程度浸けて「ゆらし洗い」する
洗浄液を作ったあとはお湯が冷めないうちにネクタイ全体を浸し、5分程度つけ置きします。
5分経ったらネクタイを洗面器の中でゆらゆらと30回程度を目安に「ゆらし洗い」します。
ことのとき絶対に強く擦ったり揉んだりしないでください。生地に負担がかかり、型崩れや毛羽立ちの原因になります。
5.水の濁りや泡がなくなるまで「すすぐ」
ゆらし洗いで汚れを落としたあとは、きれいな「水」または「ぬるま湯」を使ってすすぎます。
水の中でゆらゆらとゆらし、何度か水を交換しながら水の濁りや泡がなくなるまでしっかりとすすぎましょう。
すすぎが足りず洗剤が残っていると、シミやシワの原因になるので注意。
6.タオルを使ってやさしく「脱水」する
水の濁りや泡立ちがなくなるまでしっかりすすいだあとは「脱水」です。
大きめのタオルを敷いた上にネクタイを置き、別のタオルで挟み込むようにして軽く押さえながらやさしく脱水します。
濡れている状態で生地を引っ張ると、乾いたあとかえってシワになりやすいので注意しましょう。
タオルを交換しながら、水分がタオルにつかなくなれば脱水完了です。
7.しっかり「乾燥」させる
タオルを使ってある程度水分を取り除いたら、ハンガーにかけて陰干しします。
風通しの良い場所で半日~1日程度、生地の表面だけでなく芯地部分も乾くまでしっかり乾燥させましょう。
8.アイロンをかけて仕上げる
最後はスチームアイロンを使って、シワを伸ばして仕上げます。
この作業がネクタイの出来栄えを決めると言っても過言ではないので、これから紹介する手順を確認しながらしっかりコツをマスターしてください。
アイロンがけの手順
- スチームアイロンを「低温~中温」に設定する
- ネクタイをアイロン台の上に裏返して置く
- あて布の上からスチームを当てシワを伸ばす
それでは一工程ずつ見ていきましょう。
1.スチームアイロンを「低温~中温」に設定する
まずはスチームアイロンのタンクに水を入れ、「低温~中温」に設定します。
設定温度は必ず130℃~150℃程度の「低温~中温」に合わせましょう。
2.ネクタイをアイロン台の上に裏返して置く
続いてネクタイの裏面が上になるようにアイロン台の上に置きます。
3.あて布の上からスチームを当てシワを伸ばす
ネクタイをセットしたらあて布を置いて、その上からスチームを当てていきます。
当て方のポイントはアイロンをネクタイに直接プレスするのではなく、1cm程度浮かした状態でスチームだけを当てることです。
アイロンを強く押し当てると、ぺしゃっとした立体感のない平坦な仕上がりになるので注意しましょう。
裏面が終わったらネクタイをひっくり返して、今度は表面のシワを伸ばしていきます。
先ほどと同じ要領で、あて布の上からスチームだけを当てていきましょう。少しずつ丁寧にゆっくりと仕上げてください。
ある程度スチームを当てたら一旦アイロンを置き、あて布を外して手で軽くシワを伸ばします。
生地が伸びる方向を確認しながら、人差し指と中指の2本を使ってシワ部分を押し広げるようにして優しく伸ばしてください。
ネクタイは織り方によって伸びやすい方向と伸びにくい方向があります。無理に引っ張ると余計シワになるので注意しましょう。
シワがなくなり立体的に仕上がっていれば、全工程終了です。
何度繰り返してもシワが消えない!そんなときは菜箸のような丸みのある長い棒を2本、ネクタイの両端から縦に差し入れ、あて布の上から軽くプレスしてください。
菜箸を入れていることでプレスしても平坦にならず、立体的に仕上がります。
それでもシワが消えない場合は、自宅で修正するのは難しいかもしれません。あきらめてプロのクリーニング店にお願いしましょう。
ネクタイを清潔に長持ちさせる方法
ネクタイを清潔に長持ちさせるためには、日頃のお手入れが何より大切です。
ここからは今日から簡単にできるネクタイのお手入れ方法について紹介します。
ネクタイのお手入れ方法
- ネクタイを無理やり取らない
- シミや汚れがついたらすぐに対処する
- 細かい汚れをブラッシングで落とす
- 使用後は必ずハンガーにかけて陰干しする
- 保管は畳まずハンガーにかける
- ネクタイはローテーションで使用する
- 防水加工を施す
1.ネクタイを無理やり外さない
ネクタイを外すときに結び目を持って無理に引っ張ると、生地同士が擦れて繊維が傷みやすくなります。
ネクタイを結ぶ位置は基本同じ位置になるはずですから、何度も繰り返していると結び目のところの生地が弱まり「ボリュームがなくなる」や「ほつれてくる」などの支障が出ます。
結果的にネクタイの寿命を縮めることになりますので、ネクタイを外すときは無理に引っ張るのではなく ”やさしくほどく” 感覚でゆっくりと外すようにしてください。
2.シミや汚れがついたらすぐに対処する
ネクタイにシミや汚れがついたらすぐに対処することも、長く清潔に使い続けるためには大切なことです。
ただ汚れてしまったからといって、慌ててティッシュやハンカチなどでゴシゴシ擦り取ろうとするのだけは絶対にやめてください。
繊維が傷んで毛羽立つだけでなく、汚れの範囲が広がりさらに奥深くまで入り込んでしまう恐れがあるので要注意です。
ジュースや醤油など水性の汚れは「ティッシュやハンカチなどを水で湿らせたあと軽くたたく」、カレーやソースなど油性の汚れは「乾いたティッシュやハンカチなどで油分を染み込ませる」。
これが正しいシミや汚れの落とし方です。
もちろんこれは応急処置にしかなりませんので、自宅に帰ったあとにきちんと洗ってシミや汚れは落としてくださいね。
3.細かい汚れをブラッシングで落とす
ネクタイを外したあとはきれいに見えてもホコリやチリなどが繊維の奥に入り込んでいますので、しまう前には必ずブラッシングして細かい汚れを落としてください。
とくに結び目はホコリやチリだけでなく汗や皮脂もつきやすい場所です。ブラッシングだけでなく固く絞った蒸しタオルで、やさしく拭き取ることも忘れずに行いましょう。
汚れをそのまま放置していると皮脂や汚れが固着し、黄ばみや黒ずみの原因になります。
「ネクタイを外したあとはブラッシング」
ぜひともこれを習慣づけてくださいね。
4.使用後は必ずハンガーにかけて陰干しする
使用したネクタイは多少なりとも汗や湿気を含んでいますので、そのまましまうとカビの原因になります。
しまう前には一度風通しの良い場所で陰干しして、余分な水分を飛ばしてあげましょう。
5.折りたたんで収納しない
ネクタイを折りたたんで収納するとシワになりやすいので注意しましょう。
おすすめの収納方法は次の3つです。
ネクタイの収納方法
- 平置き
- 丸める
- ハンガーにかける
それぞれにメリット・デメリットがありますので、ネクタイの素材や使用頻度によって使い分けてください。
「平置き収納」のメリット・デメリット
- メリット:シワになりづらく傷がつきにくい
- デメリット:カバーをしていないとホコリがつきやすい、大きな収納スペースが必要
「丸めて収納」のメリット・デメリット
- メリット:収納スペースが小さくて済む
- デメリット:素材によってはシワや傷がつきやすい
「ハンガーにかけて収納」のメリット・デメリット
- メリット:収納しやすい、シワが伸ばせる
- デメリット:素材によっては重みで生地が伸びる
6.ネクタイはローテーションで使用する
毎日同じネクタイを使い続けると汚れや傷みのスピードも早くなるので、長持ちさせるなら複数枚のネクタイをローテーションして使用するのがおすすめです。
理想は1週間に1回のペースで使用できる本数を揃えることですが、いきなり用意するのは難しいと思うので、1日置きから始めて2日、3日と徐々に間隔を広げていきましょう。
7.防水加工を施す
ネクタイのシミや汚れがつくケースで最も多いのが、食事中の汁ハネや食べこぼしです。
水に溶けやすい水性の汚れならまだ良いですが、カレーやソースなど油性の汚れだと落とすのも一苦労。
そんなときに便利なのが、ネクタイに防水加工を施すことです。
市販の防水スプレーをネクタイにサッと吹きかけるだけで、食事中の汁ハネや食べこぼしはもちろん、突然の雨や夏場の汗からもネクタイを守ってくれます。
ただ市販の防水スプレーは持続時間が短く効果も弱めなので、強力な防水処理を希望する人はクリーニング店にお願いしたほうが良いです。
下記に防水加工を利用できる宅配クリーニング店をまとめていますので、気になる人は一度チェックしてみてください。
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まとめ
今回は自宅で簡単に洗えるネクタイの正しい洗濯方法や、清潔に長持ちさせる方法について紹介してきました。
天然素材や柄物など一部自宅での洗濯に向いていないネクタイもありますが、洗濯可能なネクタイなら少しの注意で簡単に洗えます。
一見きれいに見えるネクタイも、繊維の奥には皮脂やチリなど汚れが蓄積されています。
汚れをそのまま放置していると生地が傷んで劣化スピードも早まりますので、2ヶ月に1回くらいは洗濯して溜まった汚れをきれいに洗い流してくださいね。